イカヒビ東京録

先週に引き続き、
再びみやこへ
今回は高速バス


個人的な商談をさっさと済ませて
いくつかの、美術館や画廊をまわる
身震いするほどくやしくて、造りたい衝動をかきたてる作品と
わかるわかる、やっちゃうよねー、でもなにも感じないなぁという作品を観る。
頭痛がする。
東京にいたころ、いつも痛かった場所がまた痛む


執念で描き続けて
手が黴たひと
西八王子にいたとき
近所にアトリエを構えていた女性だ
この作品は、もしかしたら、すごくはずかしいことなんじゃないか。冷静に見ると真っ赤になる。
でも、徹底が乗り越える。
のまれる。
万引きとか、悪いことをするときは、きょどらず、平然と、どうどうとやれば目立たない、あんな感じ。

わたしは教師一族の生まれなので、
万引きしたことはありません。


こやぎのようなよちよちあるきをする男を見つけた
体重がないかのように
ふわりと歩く
うしろから、こっそり真似して進む


こけしにそっくりな
大学のときの先生にまで遭遇
某有名施設の敏腕キュレーターだけど、
いまもこけしカット健在、まったく歳をとらない。
なにゆえだろう。


ぼんやりメトロに乗って目的地から離れる
赤坂


美術館
たまたま無料の日ってことによくぶちあたる
わが画廊のオーナーに、招待券をもらったというのに。
不幸を絵にかいたようなおもろかわいそな
愛すべき裸梱包の先輩に、招待券をあげる
価値ある紙はひとを喜ばす
彼は今頃、「会えるってきいたから」とかなんとか言いながら、
年賀状をくれた。


都会で最もいやなことは
すごく怒鳴っている親が多くて
怒鳴られた子供の真っ黒い潤んだ目と、視線が合うことだ


近美工芸館にふらり
水差しうつくし
入口のドアノブガ異常な低さで、近衛たちは小さかったんだろうと思う
皇居北の丸
ピンクリボンの連中がずらずらなんとかウォークをしていた
よいことなんだろうけど、
狭い歩道で四列に広がって歩いており
寒々とした。


皇居周辺は三分〜五分咲きの桜


上野公園は六分かな


表参道の高級住宅街奥まった角で
華やぐ桜は満開


どこにあってもよいのだけど、
みちゆくひとが順番に見上げるさまに、
「ひと」に、目がいく
桜を見上げる顔は無防備でほころんで一様に美しい


おかしいぞ。わたしこんなだったか?


錆びた上に鈍くなっている。


いままさに走ってる連中の
ひとりひとりに会っていく
みんなごちそうしてくれる
わたしが全身ユニクロだからだろうか。


ちょっとサボりすぎた。
安穏として
ごはんが美味しくて
すねかじりで
なんの勝負もしてないなぁ
ながーいこと。


イヤホンから、ストレイ・キャッツのLonelySummerNightsが聞こえて
やるなぁ、わたしのポータブルプレイヤー。参った。
少し涙が出た。
海蛇の気分で真っ暗な高速を這い
巣穴に戻るのだ。