四次元トランク

ウミウシの写真集の見すぎで
夜運転するときは
対向車をウミウシと思うことにする
高速ウミウシ
一様に、ナンバープレートという出っ歯をたたえて間抜け面なり
ひとり暗闇でニヤニヤしながら渋滞をやり過ごす


明日、また雪になるんだって。



****


映画「めがね」を借りてきて観た
やっと観た
だけどあんましだった。
なぜか。
どういうわけか、終始、緊張している自分がいた。
ゆるーくなりたくて手に取ったのに
かもめ食堂」のここちよさが「めがね」で緊張に転じるとは。


なんと申しますか、「気をつかって」観ていたみたい。
会話とか
ああ、自分だったらすごくもんどりうって真っ赤になるなとか、そんな感じかしら。


加瀬亮の役の、会話に自然に入ってくる感じとか。
なんか、自然にできる青年に腹が立つ。
わたし腐ってんな。
だからTDLなんかで絶対耳をつけて闊歩できないな。もったいないことに。


さて、映画とあまり関係ないというか多少関係あるというか
トランクを捨てるシーンがあって
ものすごーくクリアに多摩丘陵を思い出した。


タマビの裏っかわは
なんにもない丘で、草がぼーぼーで勢いよく伸びて
そこにむりやり道路を通して、平成狸合戦ぽんぽこの舞台となってるわけですが
今はおうちも沢山建っているのかな、知らんけどさ。


学生の時、多摩丘陵に住んでいたロクちゃんが
そっから歩いて通ってきていた。
そっから来る人はほとんどいなかったと思う。
みんなバスで八王子駅橋本駅のほうに散るから。
で、人っ子ひとりいないって表現がぴったりのサイドを草がぼーぼーしてる道
たまにわたしもバイクで通った。


あるときロクちゃんが
「あの道に、トランクが置いてある」
って教えてくれた。
おぼろげな記憶だけど
道の真中みたいなところにデンとあったような気がする。
わたしらは「きっと中は死体だ」ということにして
見守った。
なぜかあの辺はスピード出してしまう道で
人がいないからってのと新しい道路だから走りやすいってのといろいろあったんだろうけど
怖かったのが一番の理由かもしれない。


いつごろからか
無くなったように思う。
だれかが草の中に追いやったのかな。


そして、時をかける少女みたいに
バチーンとなって
あの小林聡美のトランクと
多摩丘陵のトランクは四次元で結ばれているのかもしれないと思う。
死体じゃなくて
荷物を捨てることが大事だったのなら
あんな多摩丘陵でも
南の島に見えて…こないか。