むこ投げ、墨塗り

鳥追いが見たい。
金曜の夜にぺろっとそう発言したら、意外にも「行こう!」ですて。
言い出しっぺのほうがびっくりな急展開に身を任せ、超豪雪地帯へ向かう


雪の山道をぐるぐるまわって峠を越えて
国道ってかいてあるけど、ウソだろ?対向車来たらどうすんだ、ってほど細い道
しかも除雪して、細い道路の両サイドがさらに狭まっておる
その先は崖、川、奈落なり。
滑らないように慎重に進む。
わが愛車は購入後初めてセカンドに入れて走行することになりました。
途中、小型除雪機を操る油すましのような老人が道をふさぐ。
まったく車に気付いてくれない。自由。
傘をかぶり、背に蓆みたいなのをしょっている。
あとじいちゃんかばあちゃんか区別がつかなかった。


鳥追いは夜だから、莇平(あざみひら)へ
すけべぇではないよ、あざみひら。
恐ろしくわかりにくいパンフレットによると、小正月の何かのイベントらしきものがあるらしい。
日比野克彦さんがきているらしい。
五穀豊穣、無病息災を祈念して賽の神が祭られてました。
しかもだいぶ迷ってやっとたどり着いたので
ほとんど燃えたあと…

着くなり、三、四人の男衆が寄ってきて、
相方がわけもわからず雪の崖にほん投げられる。
5メートルくらい下に。
雪だから危なくはないけど、びっくりした。
ナンチャッテ婿投げ
女子なのに。
呆然として眺めていたらわたひも後ろからがばっと捕まれて
落下。ずざざーと下に落ちたら、日比野さんがいた。
もう皆さんかなり出来上がっているご様子。
車で来るんじゃなかった。地酒うまそうだった。


そんで雪合戦が始まり、ギャーギャー言いながら下着までびしょびしょになって遊んで
やれやれ、と地上に上がって火に当たっていたら
今度は墨塗りの刑
墨塗りって、墨汁とかを筆で塗ったくるんじゃないんだね
そうとう出来上がってあしもとのおぼつかなくなったおじさんに
さっき神にささげて焼かれたものの炭を雪で練った、ほんっとにまっくろのでろでろを
顔中になすりつけられました。
お払いの意味があるとかないとか。
できあがっている日比野氏は、あんにゃーはーらーみーだーと唱えながら
一人で火渡りをおっぱじめ
服が溶けていました。
全員墨塗りたくりネシア・メイクでケロケロ笑いながら
餅を焼いて、どこの誰とも知らないひととしゃべって
カレーを食った。
参加費?というか、どーでもいい感じで徴収されたのは実費いかなんじゃないかと思う¥500のみ。
いいのかな?すごいな。
集会所では500円で泊まれるらしいよ。
勝手にその辺の米たいて食えだって。
びっくりしっぱなし。


地元のしょ(衆)。

いっぱい洗礼を受けて
何がどうなったのか咀嚼しきれないまま
とにかく近くに雪と人をいやってほど感じて
この枠のない、決まり事のない、誘導されない、地元の行事にぺこっと入れてもらえる感じに
妙にこそばゆさを感じながら発つ。


莇平では鳥追いは前日だったんだって。
どうもあのパンフレットは不親切ではないかい?
HPもわかりにくい。
東京から来た連中とか、きっと大変だったと思う。
そんで、まつだい農舞台で今夜やってるほかの集落の鳥追いを紹介してもらう。
鳥追いを見に来たんだもん、
執念深く聞く。
そしたらもう始まっていて、そこの集落までふつうなら車で15分とか。
この日はものすごーく雪が積もったので
つく頃には終わっています、ですて。
なんですと?!
だからってあきらめません、職業柄、職業病。
最後の少しでも見たいから場所を教えたまえ、チミ、ってことで
無理やり聞き出して目指す。


でもねー、だめだった。悔しい。
途中まで順調だったけど、通り過ぎちゃった。廃校跡。
しかも、廃校を出発して歩き回るんだもんね。
道に迷ってるなーと認識して、引き返して、
あれが学校ジャンとか言ってたら鳥追いっぽルックの女子たちに遭遇。
ちょーちんを持ってござる。
聞いたらやっぱりそうだった。そんで終わってた…
ぶー
この次の機会に譲るしかないですね。


じゃあ温泉だ、とのことで
芝峠温泉へ。500円。やっすー。
内風呂と露天とサウナと水風呂と寝風呂がありました。
棚田が広がるものすごい絶景、らしいけど、夜なんで
ふかいふかーい、闇に閉ざされていました。
帰りはさすがに山道怖いので、柏崎までまわって116でちんたら。
だんだん地面の雪が少なくなって、吉田でラーメン食って、やれやれと思ったら
猛吹雪になって、運転しながら迫りくる雪で目が回った。


新潟は故郷とはいえ
あちこち別世界
たった2時間走っただけで別世界だもんな
すげー
莇平の小正月は、本当にそのまんまで
みんなでそれらしいアート作品をつくろうだとか、
観光客にこれをやらせようとか
導かれたり事務的に処理されたりってのが一切ないことが新鮮だったなぁ。
どんなイベントに参加するより、土着のものにひょいと入れてもらえて
墨塗ったくられたことのほうが
はるかに刺激的。
婿投げは日比野さんがやりたいって言って続いているものらしいけど。
そうか、遊べばいいんだー
遊べばいいんじゃんねぇ。
自分の頭が凝り固まってるってことがいやってほどわかったのでございました。